イップス克服はやればできる!なりやすいタイプと乗り越え方を解説
2020.01.30

スポーツ選手を悩ます「イップス」の症状や原因を解説

スポーツ選手に多いと言われている「イップス」。イップスは、特定の状況において、今までできていたことが、急にできなくなったりする運動障害です。
一般的に、スポーツ選手に多いと言われていますが、仕事や日常生活でもイップスが表れることもあります。そこで、今回は誰にでもなる可能性のあるイップスの症状や原因について解説していきます。
そもそもイップスとは何か?症状は?
「イップス」とは、心の葛藤によって、筋肉や神経細胞、脳細胞にまで影響を及ぼす心理症状で、今までできていたことが、突然できなくなってしまう運動障害の1つと言われています。スポーツ選手の中にはイップスの経験者も多く、発症をしてしまった人にとってはどうやって改善させるか、非常に深刻な問題となります。
イップスの症状は多岐にわたり、例えば、キャッチャーへの送球ができない、外野から中継まで投げられない、フライが取れない、バットが振れないなどさまざまです。
スポーツの世界だけで症状が見られることでもなく、日常生活においても、ペンを使って文字が書けなくなるという症状もイップスなのです。
イップスの原因は「脳・心・体」のバランス
では、なぜイップスにかかってしまうのでしょうか。その原因は「脳・心・体」のバランスにあると言われています。その3つのバランスを上手にとることで、イップスは克服できるのです。
その具体的な例としては、脳で「~しなければいけない」と思っているとき、心では「~したくないな」、と感じると体は自然と動かなくなります。自身がやりたいと思っていることや、脳や心でやりたいと感じていることは、体も自然と動きます。
要するに、脳と心と体が向かう方向が同じであれば、自然と体も動き、パフォーマンスを発揮できるでしょう。
どんなスポーツ選手でもなるイップスの主な種類
イップスが起こり得る場面は、スポーツ界に多く、野球、ゴルフ、テニスなどさまざまなスポーツで起こる可能性があります。また、スポーツ以外でも楽器を弾く場合、仕事や日常生活の中で起こる場合もあり、誰でもイップスになる可能性があることは覚えておきましょう。
それではスポーツに関する主なイップスの種類を紹介していきます。
野球の場合は、送球イップスとバッティングイップスがあり、圧倒的に送球イップスが多い傾向にあります。野球はチームプレーであるため、失敗してはいけないという責任やプレッシャーが原因で、筋肉が硬直し、思い通りのプレーができなくなると言えるでしょう。
すべての球団にイップス選手がいると言われているほど多くの選手を悩ませています。
ゴルフイップスは、イップスの中で一番多く、4つのパターンがあります。素振りの場合、ボールを打つ場合、コースに出る場合、試合の場合で、中でも多いのは、ボールを打つ場合とコースに出る場合に多く見られます。
特にプロゴルファーの場合は、試合の場合のイップスが多いと言われています。
その原因は、ゴルフはプレーをする時間が長いスポーツであり、ボールを飛ばしたい、入れたい、寄せたい、勝ちたいと強く思ってしまうことが原因だと考えられています。
ゴルフ選手の場合は、引退するまでに1回はイップスになることが多いとも言われるほどです。
テニスイップスは、フォアハンド全般、サーブ、トス、球だしでイップスになり、フォアハンド全般のイップスが一番多いです。症状としては、腕の感覚がなくなったり、異常に力が入ったり、まるで、自分の腕じゃないような感覚になります。
選手は、周囲にわからないように治療をしながら、試合に出場している場合が多いです。
卓球イップスは、テニスイップスと症状が似ており、サーブが入らなかったり、フォアハンドが打てなくなる選手が多いです。腕や手首、指先の感覚が分からなくなってしまいます。
イップスになりやすい人の特徴を紹介
誰にでもなる可能性のあるイップス。その中でも、なりやすいタイプの人や特徴はあるのか見ていきましょう。
真面目で責任感が強い人
真面目な人の傾向として「こうしなければいけない」「きちんとしなければいけない」というタイプの性格の人が多く見受けられます。真面目であるがために、ミスをした際にも「次に失敗したら自分の責任だ」と過剰に受け止めることもあり、必要以上にプレッシャーを感じていることもあるでしょう。
さらに責任感もあるため、自分の練習不足のためだと悩み、さらに練習を重ねてしまうことも。イップスは技術的な要因も考えられますが、もともとできていた行動に現れることが多く、さらに努力したり練習したりすること自体が、自身を苦しめてしまうでしょう。
真面目で責任感が強い傾向にあるタイプの人は、イップスになりやすいと言えます。
他人の目や評価が気になり言いたいことが言えなくなる人
「もっと周囲に認められたい」「こんなプレーは恥ずかしい」など、周囲の目や評価を気にするタイプの人は、気にするあまりに自身の気持ちを抑えることで、コントロールできなくなり、心が苦しくなる場合があります。
自分の言いたいことが言えなかったり、我慢したりすることが重なると、ストレスが強くなりイップスの症状が現れやすくなります。言いたいことが言えない状態が習慣化されると、我慢していることさえ分からなくなり、心のバランスが崩れ、イップスの原因となるでしょう。
完璧主義の人
周囲からすると、完璧であり十分できているのに、本人は自分のプレーに納得できておらず「もっと、こうできたはずだ」と自身を追い込み、イップスになる場合もあります。
「こうでなければいけない」という思いは、理想と現実のギャップを生むことになります。
例えば、野球の場合、10球投げて8球ストレートコースだったという結果に対して、8球もストレートだったと思うのか、2球も外してしまった、と思うのかで、2つは大きく変わってきます。
前者はポジティブに結果を捉えており、後者の場合は、10球すべてがストレートにならないと納得することができない状態です。次に同じことを行った場合に、それ以下の結果になれば、非常に落ち込む可能性もあります。
完璧を目指すことは、どこまでも結果に納得がいかないことの連続になり、自分自身を苦しめてしまうため、イップスになりやすいと言えるでしょう。
高い能力がある人
もともと能力が高く、チームのエースとして活躍したり、身体能力の高い人はイップスになりやすいでしょう。能力が高いことで、「自分はもっとできるはずだ」と現実と理想のギャップに悩んでしまいます。
プロのスポーツ選手として活躍するアスリートに、イップスが多く見られることからも、高い能力がある人はイップスになりやすい傾向にあります。
イップスの克服をめざす7つの方法

イップスになってしまった場合、一日でも早く克服したいという気持ちがある一方で、どうしたらいいのか不安で悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
人はやってはいけない、と言われるとやってしまいがちになり、治療は長期化する可能性もあります。焦らずじっくりと自分自身と向き合うことが大切です。
新しい動きを習得する
イップスを真正面から治療しようとすると、逆効果になる場合も。その場合は、イップスになる動きを新しい動きで上書きする方法があります。スポーツ選手であれば、新しいフォームを身につけるということです。一から新しくフォームを作り直すことは、心理学的にも効果があると言われています。
しかし、スポーツ選手にとって、フォームを変えるにはなかなか勇気が必要になります。その場合には、どうすれば良いのでしょうか。
強制的に他のことを考える
スポーツ選手において、フォームを修正することはなかなか難しい場合もあるでしょう。その場合は、気をそらすことも効果的です。その方法はざまざまで、音楽を聴いたり、クイズに答えたりして気をそらします。
イップスが深刻な場合は、脳が無意識的にイップスの動きをしてしまいがちなので、強制的に他のことを考えさせるという方法が効果的でしょう。
なりたい自分をイメージする
イップスになると、周囲が心配していろいろとアドバイスをくれる場合もあるでしょう。しかし、あまり言われ過ぎると逆にどうしていいか分からくなってしまいます。
イップスになると、ついつい自分を責めてしまいがちですが、克服するためには「自分らしく」いることが大切です。
自分が好きなことに打ち込んでいる時などは集中しており、気分もワクワクしています。そういうリラックス状態では、最大のパフォーマンスを発揮できるでしょう。
スポーツにおいても同じことが言えますので、自分がどうしたいのかを常に忘れないようにすることが大切です。
また、どんな自分になりたいのか、スポーツをする目的は何なのか、頭でイメージしていくことは重要です。なりたい自分の姿をイメージすることで、結果にもつながりやすくなるでしょう。
脳・心・体のバランスをとる
頭で考えていること、心の中で思っていること、行動しようとしていること、全てがバラバラだとうまくいきません。脳と心と体がバランスが取れていないと、思うように体が動かなくなります。
自分の心で「~をやりたい」と思い、自然と体がついてくるのが本来の自然な姿。体が動かなくなっているという状態は、どこかで葛藤が起きている可能性が高いでしょう。
「~しなくてはいけない」が「~しよう」となれば、自然な動きにつながるでしょう。
自分のやりたいようにやってみる
イップスになる原因の1つに、周囲の環境が挙げられます。
例えば、子どもの習い事など、本人の意志ではなく、親のすすめでやらされている場合に、イップスになることがあります。
また、指導者から「こうしろ」「それはだめだ」と言われると、次に同じことをすれば、また怒られてしまう、こうしなくちゃいけない、と思うようになります。その気持ちがストレスやプレッシャーとなり、子どもたちを苦しめることも。人は、ミスをしないように、と考えれば考えるほど、ミスをしてしまうものなのです。
本来あるべき姿に戻って、やりたいようにしてみると良いでしょう。
紙に自分の思いを書き出してみる
自分自身の状態を客観的に認識するためにも、自分の思いを紙に書き出してみましょう。そうすることで、頭の中で抱えていたものが吐き出され、気持ちが整理され、すっきりします。
全て抱えていたものを一旦出して頭の中をからっぽにすることで、次にするべきことが浮かんでくるでしょう。そこで本来の自分と向き合える状態になります。
周囲の人に相談をする
イップスになると不安やプレッシャー、焦りなどでどうしようもなく苦しくなることもあるかもしれません。そういう場合は、1人で背負わず周囲の人に勇気を持って相談すべきです。
自分の悩みを吐き出すことで、気持ちもすっきりとします。人の意見やアドバイスを聞くことで、今まで気付いていなかったことにも気付けるかもしれません。
思い詰める前に、周囲の人や専門家に相談することをおすすめします。