一流スポーツ選手も実践!スポーツメンタルトレーニング方法
2020.01.28

スポーツメンタルトレーニングとは
実は、メンタルトレーニングの歴史はかなり古く、1950年代の旧ソ連が始まりと言われています。その時代のメンタルトレーニングは、宇宙飛行士のためのトレーニングでした。
今回は、メンタルトレーニングの歴史やその目的、鍛え方、また一流スポーツ選手のメンタルトレーニングの事例をあわせて紹介していきます。
スポーツメンタルの歴史は意外と古い
1950年代から60年代にかけて、旧ソ連はオリンピック選手に対してメンタルトレーニングを実施することになります。旧ソ連がオリンピック選手にメンタルトレーニングを取り入れたことで、素晴らしい結果を残しました。そして、瞬く間に東洋や西洋へとメンタルトレーニングは広がりを見せたのです。
また、アメリカとカナダがメンタルトレーニングを取り入れ、1984年のロサンゼルスオリンピックで、両国がめざましい成果をあげたことで、世界中に広がっていきました。
日本では1981年にメンタルトレーニングの考えが取り入れられましたが、当時はまだまだ「根性論」が全盛期で、メンタルトレーニングの概念の浸透には時間がかかってしまったのです。
2000年のシドニーオリンピックで、日本の12競技団体がメンタルトレーニングを導入し、オリンピック選手だけではなく、一流スポーツ選手を始め、大学や高校のスポーツ現場にも取り入れられはじめました。
メンタルは「心」ではなく「思考」
そもそもメンタルとは、どのような意味で捉えられているのでしょうか。一般的には、根性や精神力のような「心」で解釈をされていますが、実は「思考」を中心にして「感情」と「行動」の3つの要素で構成されているのです。
目標を達成するために自分はどうするべきか、どう行動すべきかという「思考」。モチベーションをあげるための「感情」。目標達成に向けたさまざまな「行動」。「思考」を中心に「感情」と「行動」の3つがバランスよく組み合わさっているのがメンタルです。
それぞれの要素がお互いに影響しあうことにより、自身の力になっていきます。したがって、3つの要素をバランスよく成長させていくことで、よりスムーズに目標を達成できるようになるでしょう。
スポーツメンタルトレーニングの目的とは
スポーツメンタルを鍛えても、すぐにメンタルが強くなるわけではありません。技術を日々のトレーニングで取得していくのと同じように、メンタルトレーニングも日々の積み重ねで習得できるようになるでしょう。
ここでは、メンタルトレーニングを行う主な2つの目的について解説します。
本番でいつも通りの実力を発揮する
スポーツメンタルのトレーニングを行う目的の1つは「本番で実力を発揮する能力」を鍛えることです。試合の本番で、緊張やプレッシャーに押しつぶされそうになり、いつもの実力が発揮できなかった、そんな経験もあるでしょう。
経験したことがある人は、非常に悔しい思いをしたはずです。その日のために練習してきたことが、当日発揮できない悔しさは相当なものでしょう。そんな悔しい思いを二度としないためにも、メンタルを鍛える必要があります。
本番で実力を出し切るためには、「ゾーン」に入ることで良いパフォーマンスを発揮できるようになります。「ゾーン」は、自分の力を最大限に発揮できる、最高潮に集中力が高まっている状態のことです。
「ゾーン」になる状態を作り出すことが、スポーツメンタルをトレーニングする1つの目的なのです。
自分の実力を伸ばしていく
もう1つの目的は、「自分の実力を伸ばしていく能力」を鍛えることです。日々同じトレーニングを行っていても、「伸びる選手」と「伸びない選手」に分かれてしまいます。
それぞれの能力の違いによることも多いですが、メンタルが非常に大きく影響しています。いくら技術的なトレーニングを重ねていたとしても、「どうせ本番にはでられない」「プロになるのは難しい」などネガティブな思考でトレーニングをしたとしても上手にはなりません。
人はこのような否定的な考えがあると、判断力が落ちたり、動きも遅くなります。つまり、伸びる選手と伸びない選手の違いは、普段の練習から、本番さながらの高い意識を持って取り組んでいるかどうかです。
しかし、高い意識をずっとキープするのは現実的に難しく、常にメンタルを良い状態に維持するために、日頃からのトレーニングが必要となります。

それではスポーツメンタルにはどのようなが特徴があるのか紹介します。
目標設定をする
まずは目標設定をしましょう。目標を設定することで迷いがなくなります。明確な目標設定をすることで、脳はその目標を重要なものだと思います。すると、脳は自動的に目標を達成するための情報を探しにいくのです。
また、人はすぐに忘れてしまう生き物なので、目標はノートに書いておくことをおすすめします。
例えば、目標を設定している最中は、その最終目的が頭に浮かびワクワクした気持ちになっているでしょう。しかし、時間の経過とともにその気持ちは薄れていき、ワクワクしていた気持ちも忘れ去られていくからです。その気持ちを維持するためには、より具体的に何かに書き留めて、おくことで、読み返した際にイメージしやすくなります。
モチベーションをコントロールする
日によって、モチベーションが高い日もあれば、なかなかやる気が出ない日もあると思います。モチベーションをいかにコントロールできるかが、メンタルをコントロールするうえで大切になります。
モチベーションが低下する原因の1つは、誰かに指示されたことを行う場合です。ワクワクした気持ちがなく、ただその指示された行動だけをしようとするので、モチベーションが上がりません。
また、プレー中にイライラしたり、不満をもったりと、ネガティブな感情を持ち続けることは、モチベーションの低下につながります。そのような状況になった場合には、メンタルをコントロールしてその状況を回避しましょう。
ゾーンの状態になり集中力を高める
スポーツの世界では、「ゾーン」という言葉をよく耳にします。「ゾーン」では、集中力がかなり高まっていて、ベストなパフォーマンスが発揮できる状態になっています。単純に、調子がいいという状態ではなく、まるで試合に出ている自分を上空から見ているような、そんな不思議な体験と言えるでしょう。
もちろん、ゾーンに入ったからといって良い成績を残せる保証はありませんし、良い結果を出したときに、必ずしもゾーンに入っていたとも限りません。
しかし、多くのスポーツ選手は最高の結果と「ゾーン」を結びつけていることから、スポーツをするうえでゾーンを体験することは非常に幸せなことだと言えるでしょう。
イメージトレーニングで脳を錯覚させる
イメージトレーニングは、スポーツを上達させるうえで、科学的にも証明されている、非常に効果のあるトレーニングです。イメージとは、脳の神経細胞の働きを向上させる「脳のトレーニング」です。
人が行動する際には、その先に必ずイメージが存在します。脳は、イメージを実現させようとしてくれるのです。したがって、イメージをトレーニングすることで、肉体的なパフォーマンスに良い影響をもたらしてくれるでしょう。
根拠がなくても「できる」という自信をもつ
前述の2つの能力を発揮するためにも、まずは「自信」をもつことが大切です。しかし、トレーニングをしていない状態で自信を持とうと言われても、難しいと思うかもしれません。
あらゆることに共通しますが、できないと思っていてもできるようにはなりません。できると信じてトレーニングを重ねることで、できるようになります。
世界で活躍している一流のスポーツ選手も、最初からできた訳ではありません。最初は根拠のない「できる」が、時間の経過と共に自然とできるようになります。「できる」「できない」の分かれ道は、「できる」と信じて進むかどうかの差と言えるでしょう。
一流選手のメンタルトレーニング事例とポイントを紹介
このように、スポーツの世界ではメンタルはスポーツ選手に大きな影響を与えます。いくら、技術面ばかりトレーニングしても、本番で緊張をして失敗を恐れたりすると、いつもの実力を発揮できません。
また、世界で活躍している一流のスポーツ選手は、どのような方法でメンタルを鍛えているのでしょうか。一流スポーツ選手のメンタルトレーニングの事例を紹介します。

元野球選手のイチロー
イチロー選手は、「失敗しても成功しても自分」という考えでプレーをしていました。結果は思い通りにはいかないけれど、そこに至るまでの姿勢はコントロールができるという考えでプレーしていたそうです。
イチロー選手と言えば「ルーティン」が有名で、打席前に必ずバッターボックスで、ユニフォームの肩や袖をつまみ、バットを立てたりする一連の動作を行っていました。緊張する場面で、そのような一連の動作をすることで、平常心を維持していたと言われています。
テニス選手の錦織圭
スポーツの中でも、メンタルのスポーツであると言われているテニス。そんな中で、錦織圭選手は強靭なメンタルを持ち合わせていると言われています。
錦織圭選手のコーチであるマイケル・チャン氏は、試合前に「お前はショーをしに行くんじゃない、勝ちに行くんだ」と言い聞かせるそうです。そう言われることで、錦織圭選手も、そう思うことができ、自分を信じられるようになったそうです。
イメージトレーニングをして「できる」と思い、自分を信じて試合に臨み、良いパフォーマンスが得られている事例と言えるでしょう。
一流選手のメンタルを鍛えるポイントとは?
それでは、一流スポーツ選手のメンタルトレーニングのポイントはなにかを紹介していきます。
1つ目は、自分の行動や感情、思ったことなどを書き留める「自分観察ノート」。活字にすることで、自分自身を客観的に捉えることができます。書くことで頭の中が整理され、ネガティブな感情とも客観的に向き合えます。自分がどのような状態にあるのかを、客観的に俯瞰することがトレーニングになります。
2つ目は、「結果に注力しすぎない」こと。結果よりも、そこに至るまでの自分の姿勢に注力することで、さまざまな局面で冷静になることが可能です。「結果」や「評価」から目を背け、自分自身が行ってきた行動の達成感に目を向けるようにしましょう。
3つ目は、「自分の最高の状態を知っておく」こと。常に、自分の感情と向き合うことで、一番良いパフォーマンスの時は、どのような状態だったかを観察しておきます。そして次からはその状態と同じ環境を作り出すことで、良いパフォーマンスを発揮できるでしょう。
4つ目は、「ゾーンに入りやすい状態を作る」こと。試合中には、緊張や不安などさまざまなものが頭の中で一杯になりがちです。一度、頭の中を空っぽにして、適度なリラックス状態にし、最大のパフォーマンスを発揮できる状態にします。リラックスすることで集中力がアップするでしょう。