アスリートのセカンドキャリアを成功させるための4つのコツ
2020.01.30

第一線で活躍できなくなった選手の現状を知る機会なんてあまりなかったから、衝撃だったわ。
じゃあ、セカンドキャリアを成功させるには、どうすればいいの?
- アスリートのセカンドキャリア問題が注目されるわけとは?
- アスリートのセカンドキャリアの現状
- セカンドキャリア問題は社会全体の課題である
- アスリートのセカンドキャリアに関する4つの問題点
- 収入が減額する
- 生活水準の維持が困難
- 資格やスキルがない
- 練習以外の時間の使い方
- アスリートのセカンドキャリアを成功させるためのカギ
- 現役時代から引退後の生活を考えて準備をする
- セカンドキャリアに役立つ資格やスキルを身に付ける
- 投資をしておく
- スポーツ以外の人脈づくりをする
- 有名アスリートのセカンドキャリアの事例を紹介
- 選手を支える側についた元サッカー選手中田浩二さん
- 高校教師になった元レスリング選手伊調千春さん
- 整体師になった元野球選手石橋尚登さん
- 公認会計士になった元野球選手奥村武博さん
- スポーツ選手の引退後のセカンドキャリアの支援制度を紹介
- スポーツ庁の委託事業「スポーツキャリアサポートコンソーシアム」
- 競技団体や大学におけるキャリアサポート
- 民間企業のセカンドキャリア支援
- まとめ
アスリートのセカンドキャリア問題が注目されるわけとは?

2019年ラグビーのワールドカップの開催、2020年東京オリンピックの開催と、世界的に見ても大きなスポーツの開催が、近年日本で行われています。
2019年のスポーツマーケティング基礎調査の生活者のスポーツに対する意識や消費行動の変化の調査によると、スポーツをすることが好き、スポーツを見るのが好きという人は、全体の約7割弱という結果になっています。
このことからも、近年スポーツへの関心が増加傾向にあると言えるでしょう。
アスリートに目を向けてみた場合、選手の輝かしい成績は、毎日のようにニュースとなり、活躍は目を見張るものがあります。
一方で輝かしい表舞台から引退したアスリートたちは、どのような人生を送っているのかについては、目を向けられることがありません。アスリートの引退後、つまりセカンドキャリアは、社会問題として取りあげられることも多く、実に多くのアスリートが自身のセカンドキャリアに悩まされている現状です。
アスリートのセカンドキャリアの現状
小さい頃から、スポーツしかやってこなかった、というアスリートも多く、引退後は選択する余地もないまま、関わりのあったスポーツの延長線上にある職に就いたり、それに関連する仕事をしたり、自由な職業の選択が難しい状況にあります。
その理由は2つあり、1つは、アスリート自身がスポーツしかやってこなかったので、スポーツ以外のことを考える予知がない、自分にはスポーツ以外は何もできない、と思い込んでいることです。
もう1つの理由は、アスリート選手の獲得を希望している企業と接点がなく、両者のマッチングがうまく機能していないことも原因です。
その現状を打破するために、近年ではアスリートに特化した転職エージェントサービスも開始され、より双方の希望を叶えた就業支援の場となり、注目されています。
セカンドキャリア問題は社会全体の課題である
アスリートのセカンドキャリアの問題は、選手自身がセカンドキャリアで活躍をしていくためには「アスリートとして企業から求められていることを知ること」、その上でアスリート自身が「自分の強みをしっかりと企業にアピールしていくこと」、これらの2点を認識していくことで改善されていくはずです。具体的には、スポーツをすることで培ってきた「集中力」「向上心」「挫折と乗り越えた経験」など、これらは一般社会にも求められることです。
アスリートのセカンドキャリアの問題は、アスリートと企業という単純な問題ではなく、社会全体で取り組むべき課題と言えるでしょう。
アスリートのセカンドキャリアに関する4つの問題点
「引退」を決意したり、「戦力外通告」を受けると、競技生活から離れることとなり、第2のキャリア形成をどうしていくかが現実問題になります。
個人のおかれている状況により問題になる事柄は異なってきますが、一般的な4つの問題点を紹介します。
収入が減額する
生活をしていくためには、「お金」が必要になります。アスリートは、主に競技1本で生活してきている人も多く、その主要な収入源がなくなるわけです。
引退後は、所属するチームからの収入がなくなるので、違う形で収入を得ていく必要があります。すぐにアスリート時代と同じような収入が得られるようになればいいですが、現実問題として難しいと言えるでしょう。
ちなみに日本のトップアスリートの収入は数十億円になりますが、一般的なアスリートの平均年収は、プロ野球選手が約4000万円、プロゴルファーが約3000万円、プロサッカーが約2000万円となっています。
企業で勤めながら、前述のような金額を得られる可能性は低いと言えるでしょう。
生活水準の維持が困難
先程の収入と関係していますが、今まで通りの生活水水準では生活がたちまち苦しくなります。家賃、光熱費、食費、交際費すべての項目において、水準を変える必要があります。
セカンドキャリアを考える前に、現役生活の時代から引退後の生活のことをイメージしながら、投資をしたり、セカンドキャリアに役立つ準備をしておくことが重要になるでしょう。
資格やスキルがない
若い頃から、競技1本の生活を送ってきた場合は、スポーツしか知らないことも珍しくありません。スポーツのことなら、スキルや知識もたくさん持ち合わせているのに、他のことはサッパリなんてことも。
スポーツに関するスキルは、公式試合の成績などで客観的に評価されますが、外部からするとその評価の基準が、わかりにくいこともあります。
スポーツに限ったことではありませんが、業界の評価は、他の業界からするとその価値が分からなかったりするものです。
練習以外の時間の使い方
現役時代は、練習以外の時間は、疲労回復に務めたり、自身の自由な時間として好きなことをしたりして過ごしているでしょう。
しかし引退後は、練習時間やその他の時間もすべて自分自身で時間を決めて、管理していく必要性があります。
競技にあてていた時間は、セカンドキャリアのために利用していくべきです。
アスリートのセカンドキャリアを成功させるためのコツ

セカンドキャリアで成功させるためのカギは、すばり「意識」。セカンドキャリアに関して、意識の高い人、低い人では、結果に差が現れてきます。早く意識して準備すれば、成功はぐっと近くなるでしょう。
現役時代から引退後の生活を考えて準備をする
最近話題となっている「デュアルキャリア」。現役時代から、「競技と学業」「競技と仕事
」という2つの人生を並行して歩んでいく考え方です。
デュアルキャリアが提唱されている昨今では、アスリートも若い内から引退後の生活を意識して準備するケースも増加傾向にあります。
競技を続けていきながら、他の世界に触れることは、良い刺激にもなります。競技時間の減少により懸念される技術の低下よりも、競技以外のことを体験する方が、長い目で見ても将来に役立つでしょう。
セカンドキャリアに役立つ資格やスキルを身に付ける
以前のセカンドキャリアは、タレントや解説者、飲食店の経営など偏った職種に集中していました。最近のセカンドキャリアの現状は、ロールモデルも多彩になり、起業家になるアスリートもいるほどです。
現役時代に専門知識を身につけ、役立つ資格やスキルを習得しておくことで、引退後の生活にスムーズに移行していけるでしょう。
投資をしておく
引退後の生活水準がどの程度になるかは分かりません。ある程度稼ぐことができる現役時代に、諸費用をかけすぎず生活していくことも大切です。
引退後の生活を見据えて、投資を始めるのも1つの方法と言えます。限られた時間やお金は、投資しておくことで、将来の不安は少しでも解消されるでしょう。
スポーツ以外の人脈づくりをする
セカンドキャリアをうまく成功させている人の多くは、競技以外の人とのつながりが多い人です。競技以外の社会とどれだけ接点があるかがポイントです。
引退後、次のキャリアへ意識を切り替えるためには、外部からの情報が入ってきやすい環境の方がうまくいく傾向にあります。外部とのつながりは、セカンドキャリアについて気軽に相談できる利点と、客観的な意見を吸収できることです。
有名アスリートのセカンドキャリアの事例を紹介
セカンドキャリアには、さまざまな事例があり、何が正解などということはありません。それそれのセカンドキャリアで幸せであれば、すべて正解と言えるでしょう。自身がなりたい自分を表現できていれば、それは成功と言えるはずです。
ここでは4人の有名アスリートのセカンドキャリアの事例を紹介します。
選手を支える側についた元サッカー選手中田浩二さん
今やサッカーに関する番組では欠かせない元サッカー選手の中田浩二氏。中田氏はサッカー引退後に試合のマネジメントに興味があったので、所属していた鹿島アントラーズのC.R.Oに就任しました。
C.R.Oとは、クラブ・リレーションズ・オフィサーといい、スポンサー、パートナー、サポーター、行政機関などの利害関係者とサッカークラブをつなぐ役職になります。
今までには経験のない、SNSでの発信や、デスクワークなどに最初は大変苦労したようです。しかし、選手を支える側についたことでさまざまな側面が見え、試合では多くの人に支えられていることが理解できたそうです。
高校教師になった元レスリング選手伊調千春さん
元レスリングのオリンピックメダリストである伊調千春氏。2大会連続銀メダルという偉業と遂げた伊調氏が選んだセカンドキャリアは、高校教師でした。引退の翌年には、地元の青森の高校で、保健体育の教師として赴任をしています。
伊調氏が、高校教師を選択した理由は、進学や就職など社会への窓口である高校で、生徒たちを支えたいと思ったからでした。
その後、八戸工業高校へ赴任し、レスリング部の監督に就任しています。教師だけではなく、レスリングの監督としても活躍されています。
整体師になった元野球選手石橋尚登さん
元プロ野球選手だった石橋尚登氏。引退後は資格を取得し、整体師として接骨院を開業しました。石橋氏が整体師を目指した理由は、自身の経験によるものでした。
膝を故障してから、自由契約となり、度重なるケガに悩み、引退を余儀なくなれました。
その経験を活かし、整体師として新たなセカンドキャリアをスタートさせています。
公認会計士になった元野球選手奥村武博さん
元プロ野球選手の奥村武博氏は、ケガによる手術やリハビリで苦労し、戦力外通告を言い渡され、現役を引退しました。
しかし「このままでいいのか?」という疑問が生じて、資格の本の中から公認会計士を選択したそうです。
アルバイトとのかけもちで9年間勉強した結果、合格し、公認会計士として業務に就いています。
スポーツ選手の引退後のセカンドキャリアの支援制度を紹介
国や競技団体、企業が行っているセカンドキャリアの支援の内容は、現役アスリートに対してのキャリア形成の啓蒙活動、引退後のアスリートへの就職先の紹介や中途採用活動の支援などが主な内容です。
一般の人とは違い、スポーツ選手の場合はアピールすべきポイントや企業から求められていることが特殊になる場合もありますので、一般的な就職・転職活動とは異なってきます。
スポーツ庁の委託事業「スポーツキャリアサポートコンソーシアム」
現役のアスリートが、スポーツに取り組みながらキャリア形成に取り組める環境は重要です。それを整備するためのスポーツ庁の委託事業である「スポーツキャリアサポート推進戦略」。
その事業の一環として、2017年2月に「スポーツキャリアサポートコンソーシアム」が設立されました。
アスリートのセカンドキャリアの形成に関して、スポーツ界、教育界、経済界などが連携して促進していくことを目指しています。
そのビジョンは、アスリートが「競技と人」のキャリアをどちらも諦めずに、自らの可能性を最大限に発揮できるための社会を目指すことをサポートしています。
競技団体や大学におけるキャリアサポート
以前、Jリーグが独自でキャリアサポートセンターを設立して選手をサポートしていました。(2013年3月廃止)
NPBやBリーグでは、民間の人材紹介会社と協力してアスリートのセカンドキャリアサポートを実施しています。
大学では就職支援をサポートしたり、と各競技団体や大学においてもサポートしている現状です。
また、アスリートのセカンドキャリア形成に特化した支援機関である「日本営業大学」が、2020年4月に東京と大阪で開校される予定です。同大学のビジョンは、アスリートの就職に必要なマナーや営業スキルの教育などを行い、就職先のマッチングや就職後のケアをして定着を目指しています。
このように競技団体や大学もさまざまな形でサポートしています。
民間企業のセカンドキャリア支援
民間企業においては、人材紹介業界において、アスリートに特化した職業あっせん事業が、ここ数年で増加傾向にあります。
その支援の内容は、企業により異なりますが、引退したアスリート選手を中途採用の需要がある企業へ紹介するサービス、現役のアスリートに対して、キャリア形成についてのカウンセリングを受けることができるサービス、教育や資格取得のサポート行うサービスなど多岐に渡ります。
民間企業としては、国や競技団体などではサポートがカバーできない、個人を対象にしたサービスを提供しています。
まとめ
そのためには、国や競技団体、民間企業が協力して支えてあげてほしいわ。
もっともっと支援体制が整備されていくといいわね。